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クロス・マリオネット
〜プロローグ〜
『糸の無い操り人形』
「うぅ〜……。やばいです。本格的にやばいです……」
アレだけいたお仲間さんも、あと四人だけ。
「�bU9!! マスターが決定だ」
また一人、金髪の女性が消える。
確か、選抜試験で成績トップだった人だ。優秀すぎてマスターが決まらないって言う前代未聞の……。
「どうしたの? 旧型さん」
羨ましいくらいの脚線美、能力。全てにおいて優秀な最新の人。
それに比べてあたしは……。
「旧型さん? 聞いてます? ねぇ、ちょっとリバース!」
「はっ、はひぃ!!」
いつの間に立っていたのだろう。
さっき呼ばれた人とは違う、黒髪の美人。
「全く……。旧い型にも程がありますよ。よりによって『リバース』とは。よく選抜試験を通りましたね」
リバース……。
意味は『廃棄』。そう、あたしは廃棄予定だった人形。
「どういうつもり何でしょうね。魔導士の使い魔を選抜するこの試験を、廃棄寸前の型が通るなんて」
「そこまで言わなくても……。あたしだって、今回が最後のチャンスなんです」
「はぁ〜……。今時、可逆サイクル機関を持たない人形が生き残れると思って? 魔法だって使えないでしょ?」
うっ……。
正論過ぎて反論できない。
「人と同じく経口でエネルギーを摂取する型、でしたかしら。今時珍しいですが、貴女の製作者は?」
「――知らないです。記憶がありませんから」
なんて半分嘘だけど、それを聞くと、黒髪の女性は呆れたようにため息を吐いた。様と言うより、本当に呆れているみたい。
「もしかして、選抜試験を傘一つで通ったって言うのは貴女?」
女性が、あたしの傍にある傘を見やりながら言う。
「�bS4」
部屋に響く放送。また一人去っていく。
あたしの声は放送でかき消されたけど、女性は分かっているらしかった。
「そろそろ、私も呼ばれるわね。そうそう、私は�bU8『ローズ』。貴女は?」
ナンバーが六十番台……。
この人も最新の型。
「あたしは……、�bO0。切鈴 満那」
一瞬、彼女は驚いたように眼を開くと、すぐに薄い笑みを浮かべた。
「……そう。貴女が例の――」
何か、知っているようだけど、彼女は何も語らない。
もし、この時問いただしていれば、あるいは未来は変わったのかも知れない。
「本当に、不思議ですね。糸の無いマリオネット、いえ、糸の縺れた、と言うべきですね。その貴女が、この先どんな道を歩むのか、非情に興味があります」
「�bU8!!」
「次に会う時が楽しみですね。リバース・クロス」
その一言を最後に、部屋にはあたし一人が残った。
今日も、誰も来なかった。
未来永劫、訪れる事は無いかもしれない。
「眠いですね……」
ナンバーなんて、あたしには無い。
記憶も無い。
自慢できるような力も無い。
あたしは、『リバース』
マリオネットにすらなれない出来損ないのドール。
「目覚めぬまま、消えるのもいいかもしれません」
あたしは、造られた人間。
人形。
「ほんの少しだけ、見たかったですね。マスターの顔……――」
意識は、闇へと解けていく。
ほんの少しだけ、あたしは願う。
聞きたかった。
あたしを呼ぶマスターの声。
「いいのか?」
「あれっきゃ残ってねえんだろ? どれでも同じだ」
教室にまで響いてくる怒声。
あんな奴と一緒になるマリオネットは大変だな。
「まっ、あたしには関係ないことです」
欲をいうなら、マスターは優しい人が良い。
こんなあたしでも、対等に扱ってくれる人。
できるなら、
過去のあたしを知らない人。
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